前回の記事『企業におけるSEO対策(web集客)の始め方と初めの一歩「PVを増やす」』の続きです。
SEO対策をさらに進め、サイトの評価をさらに高め、検索からのアクセスを増やすには、やはり「顧客のニーズや課題に沿った情報、問題解決につながる情報を分かりやすく発信すること」が必要となります。よくイメージされる『記事の作成』ですね。
今回は、具体的な記事の作り方と、その進め方についてご紹介します。
【前提として】記事作成によって情報発信を始める前に組織体制を整える
こちらの活動を始めるにあたり、まずは前回の記事にて紹介したことが出来るようになっているか?をご確認下さい。
具体的には、組織内における「ニュース」を見つけて整理し、「お知らせ」という形で公開、それらを「新聞社や外部のメディアに告知する」という運営体制が整った上で、次に進みます。
その理由としては、記事の作成という作業は、その多くを人の手によって行う”労働集約型”の作業になるからです。もちろん、一部作業はAIの活用やアウトソーシングなどの外注による負担軽減も可能ですが、基本的には継続して担当できる専任の人物(広報担当者や情報発信担当者など)を設けることを勧めます。
とはいえ、いきなり専任担当者を設けるのは企業としてもリスクがあり、なかなか決断には踏み切れません。特に、人的にも資金的にも制約のある中小企業では、判断が難しいかと思います。
そこで、まずは前回の記事で紹介したような、負担の少ない情報発信に慣れていただくことを勧めています。
記事作成の手順
それでは、企業としてのSEO対策の手段の一つ、記事の作成について見ていきます。
大切なことなので改めて確認しますが、目指すは『訪れる人にとって利益のあるサイトを作り』→『サイトの評価を高めること』です。評価が高まることで、検索からのアクセスが増え、企業の認知度向上や、売上の増加に繋げることが可能となります。
事業者様(あなた)のサイトやページを通じて、あなたのお客様・見込み客の皆様の理想を実現する(問題解決の方向性が分かる、等)ためのギャップを埋めるイメージで、作っていきましょう。
手順1:自社における強み・競合との差別化要因の抽出・整理・言語化
見込み客や既存顧客に向けて、ニーズや課題に沿った情報・問題解決に繋がる情報を提供するにあたり、まずは『自社が持っている強み』や『競合他社との差別化要因』を洗い出し、伝えやすいように言語化します。
“強み”や”差別化要因”の具体例としては、高い加工技術や導入実績、既存顧客からの口コミ、柔軟な組織体制、バリューチェーン内におけるポジション、独自のサプライチェーン、大量生産による価格競争力、小ロット対応、短い納期、高品質の商品・サービス、顧客満足度の高い営業部隊、等々。事業者様によって種々様々、千差万別です。
“強み”と”差別化要因”の洗い出し・言語化は本当にお勧めで、これにより、自社(事業者様)において「何が提供できて」「何が市場から評価されており」「どのような点が競合と差別化に繋がっているのか?」、また「その背景は何か?」などが体系的に整理され、《顧客・市場に伝えるべき価値》が明確にすることが可能となります。
また、その過程において、担当者を始めとする従業員の教育にもつながりますし、自社の事業戦略の整理にも活かすことができますので、ぜひ行ってください。
手順2:顧客や見込み客のニーズを把握する
手順1の「自社における強み・競合との差別化要因の抽出・整理・言語化」と合わせて行うのが、顧客や見込み客のニーズ(抱えている課題・問題)の把握です。
ここで把握したニーズに対して、手順1で抽出した事業者様の強みを掛け合わせ、顧客の皆様の悩みを解決する(または解決の方向性を示す)記事を作ることが、訪れる人にとって利益のあるサイト作りに繋がります。
こちらも手順1と同じように洗い出し、整理し、その背景まで含めて言語化していくのですが、既存顧客と見込み客ではニーズの洗い出し方法が異なります。
まだ見ぬ見込み客を想定してニーズ収集するよりは、既存顧客を想定した方が作業がやり易いのと、『既存顧客のニーズ=他の企業のニーズ』ということも良くあるため、最初は既存顧客をイメージしながら作業してみてください。(どの事業者様でも、悩みのポイントは共通しております)
では、具体的にニーズ(抱えている課題や問題)を洗い出すにはどうするのか?
分かりやすいのは、営業によるヒヤリングや、過去の受注案件や問い合わせ、見積り依頼実績などの活用です。
※ただし、守秘義務に違反しない程度の範囲で!
・その問い合わせや見積り依頼は何を解決したいのか?
・その背景は何か?
などを洗い出し、特製要因図などを用いて整理することで、顧客のニーズの理解が進みます。
こちらも手順1と同様、従業員の教育や自社の事業戦略の明確化にもつながりますので、ぜひ行ってみてください。
手順3:記事ネタの整理とキーワード選定
手順1と2によって、「自社(事業者様)の強み」と「顧客のニーズ(抱える課題・問題)」の2つが明確になりました。
それでは、いよいよ記事の作成に取り掛かっていきます。
とはいえ、最初から理路整然とした文章記事は書けませんので、まずは記事ネタの洗い出しから始めます。
流れとしては、①「自社(事業者様)の強み」×「顧客のニーズ(抱える課題・問題)」の組み合わせパターン(記事のテーマ)を考え、②それらの文章構成を整理するという作業です。
顧客ニーズ(課題・問題)×強みの組み合わせを洗い出す
例えば、強みとして「WEB集客が可能」、ニーズとして「WEB集客を強化して認知度を高めたい」という例で考えてみると、①のパターン(記事のテーマ)としては
・企業の認知度を高めるSEO対策の始め方
・企業の認知度を高めるブログ集客の始め方
・企業の認知度を高めるTwitter(X)集客の始め方
・企業の認知度を高めるInstagram集客の始め方
・企業の認知度を高めるFacebook集客の始め方
・企業の認知度を高めるLinkedin採用の始め方
などが考えられ、
②のこれらの文章構成としては、PREP法(結論・理由・事例/具体例・再度結論の四段構成)などを基本としつつ、「顧客の問題・課題の提起」→「解決法(解決手段)の提示」→「理由の説明や具体例」→「まとめ」という文章の構成(あらすじ)を考えます。
特に、記事の作成を始めたばかりの時期は、記事の始まり(導入部分)と、記事の終わり(着地地点)が若干ズレてしまうということが起こりやすいため、この段階で初めから終わりまで一貫性のある記事の構成を検討しましょう。意識すべきは「提示・提案している強みが顧客の課題や問題に対する解決策になっているのか?」という点です。
キーワードの組み合わせを意識する
また、①と②について考え、整理する際に、検索上位を取りたいキーワードの組み合わせも意識してみます。
上記の例でいえば、「SEO対策」「企業」「始め方」や「Twitter(X)」「集客」「始め方」などの組み合わせが考えられますね。
SEO対策の記事作成にあたっては、「(1)最初に特定のキーワードを選んで→上位表示対策をする」場合と、「(2)現状書ける記事を作り→そこに含まれるキーワードで上位表示を狙う」場合の2つのアプローチがありますが、前者(1)のアプローチではテクニカルな要素も絡んでくるため、私は最初は記事作成の習慣化も兼ねて、後者(2)の考え方で進める方が良いと考えています。
SEO対策としては、時間の経過に伴う記事のリライト(修正・追記等)も重要な要素ですし、まずは(2)のアプローチで記事を作成することで担当者の育成を図り、PVが増え始めてから、記事の分析を通して(1)のアプローチによるリライトを考えましょう。その方が企業としての負担が少なく、結果が出てくるまでの期間も短くなります。
手順4:記事の作成(ライティング)
ここまで来て、ようやく記事の作成(ライティング)に入ります。
手順3の②で整理した文章構成に沿うように、そして記事の始まり(導入部分)と記事の終わり(着地地点)でズレが発生しないように、文章に肉付けをしていきます。必要に応じて「アイキャッチ画像」や「説明資料」「表・グラフ」などをPowerPointやExcelを使って作ることも検討しましょう。
なお、SEO対策的に有効とされる1記事あたりの最低文字数は800文字~1200文字(法律や医療、専門領域の場合はその2-3倍)とされますが、私の経験上、1記事あたり1500文字~2000文字程度を基準として作成した方が結果に繋がりやすいと感じています。
このライティング作業については、「企業内の担当者に直接書いてもらう(内製化する)方法」と「ライティングのみ外部委託(外注)する方法」が考えられます。記事としての重要な構成部分は手順3で仕上がっていますので、社内でライターを育成する余裕がなければ外部委託する形でも構わないと思います。(画像や資料、表・グラフの用意は別途検討)
ライティングを内製化するメリットとしては、
・自社内に記事の企画~ライティングまで一貫したノウハウが蓄積できる
・自社でリライトできるため、状況に応じて迅速な変更対応が可能
・自社について詳しい担当者が書くことで、より詳細で分かりやすい文章が作れる
などが考えられます。
逆に、ライティングを外部委託(外注)するメリットとしては、
・経験者に外注することで最初から安定した文章の作成が可能
・複数人に委託することで短期間で記事の量産化が可能
・時間のかかるライティング作業に人を割く必要がないため人件費が削減できる
などでしょうか。
内製化と外部委託、どちらもメリット・デメリットがありますので、目的と優先したい事柄に応じて選んでください。
個人的には、昨今の副業解禁の流れに合わせ、『過去に事業者様にて勤務経験があるも、結婚・妊娠/出産・子育て・介護などを理由に退職した方』への外部委託なども選択肢としては良いように感じています。
自社内外についての理解があり、人となりが分かっていることで信頼関係を築きやすいためです。
私は中小企業診断士として『授業員の育休や介護と仕事の両立支援』も行っておりますので、人材の活用をご検討される場合はご相談ください。
まとめ
以上、SEO対策の手段の一つ、記事の作成の手順について紹介しました。
具体的な進め方としては
1.自社における強み・競合との差別化要因の抽出・整理・言語化
2.顧客や見込み客のニーズの把握
3.記事ネタの整理、キーワードの組み合わせの検討
4.実際の記事の作成(ライティング)
という流れになり、1~3がしっかり出来ているなら、4については外注も可能です。
また、1と2については従業員の教育や、事業戦略の整理と明確化にもつながりますので、一度はやってみることを勧めます。(競合と差別化が出来てない事業者様ほど、特に重要)
なお、今回の記事作成にあたっては、一般的に考察される「ペルソナ設定」や「訪問者の滞在時間を伸ばすサイト構成」「クロージングに至る動線の考察」「記事の品質向上」「サイト全体の評価向上」「公開後のチェック」などについては、あえて触れていません。
その理由としては、本記事は『これからSEO対策を始め、自然流入によるアクセス増加を増やしたい事業者様』を対象として書いており、上記については記事作成ができるようになってからの方が良いと考えているためです。
記事作成については「習うより慣れろ」という部分もあります。サイトのSEO対策による集客強化を考えられている事業者様は、本記事を元に、まずはやってみることをお勧めいたします。
そして、分からない部分についてはお気軽にご相談下さい。
目指す目標と、現在地点を整理し、ギャップを埋める方法と手段を一緒に考えていきましょう。