素人2年生が教える米作りのスケジュール

農業・自然栽培

こんにちは。米作りを始めて2年目、となりのコンサルティングの中村です。

昨年痛感したのですが、米作りほどスケジュール管理が重要な作物は無いように思います。

たとえ自家消費分のみを作る「家庭菜園レベル」であっても、通常の農家さんが作るのと同じように、田植えから稲刈りまで予定を把握して進めないと、思わぬところで失敗します。

その他の野菜であれば、家庭菜園レベルであれば種まき・植え付け時期も適当で構いません(例えばミニトマトなら4月下旬~7月中旬の間ならOK、ニンニクなら9月上旬~11月上旬までOKです ※羽咋市での話です)が、米はそうはいきません。

今回は、「これから米作りをしてみたい」「家庭菜園レベルでOK」という方に向けて、初心者の視点から把握している米作りのスケジュールを紹介します。

米は収穫時期が短い作物

お米は家庭菜園で育てられる他の野菜と違い、一斉に出穂(しゅっすい/穂が出ること)し、一斉に受粉し、一斉に稔り、一斉に刈り取り時期を迎えます。特に、刈り取りの時期が短く、収穫適期より早すぎれば「未熟米」が、適期より遅ければ「過熟米」が多くなってしまうため、『育ってきたものから少しずつ収穫していただく』ということが出来ません。

一気に植えて、一気に育てて、一気に刈り取りする必要があり、米作りが難しく感じる理由は、ここに尽きるのかなと感じています。

収穫時期から逆算してのスケジュール管理が必要

また、米は品種によって早い時期に(8月下旬~)収穫できる「早生(わせ)」、秋が深まってから収穫される「晩生(おくて)」、その中間頃に収穫される「中生(なかて)」があるのですが、種を蒔いてから収穫適期までの、凡その期間が決まっています。

さらに言えば、穂が出てから実が稔るまでの期間(登熟期間:おおよそ開花から40-50日間)も決まっており、その間に『いかに稲に合った水と日光の管理を出来るか?』が、米の「味」と「収穫量」を決めると言っても過言ではありません。

そして、穂が出る条件は品種によって異なるそうで、私の師曰く「日照時間の減少」「最低気温(最高気温)の低下(上昇)」などが関係しているとのこと。(ここは詳しく分かりません‥申し訳ない)

そのため、米作りでは『いつの時期までに、何をしておかなくてはならないのか?』が明確になっており、それに合わせた活動予定の計画と準備が必要になってきます。

以下に、米作りのスケジュールを収穫時期から逆算して紹介しますので、家庭菜園レベルでの米作りを検討している方は参考にしてみて下さい。

米作りのスケジュール(田んぼの準備~収穫まで)

スケジュールは昨年の我が家での例を元にしています。栽培地は当方の羽咋市で、品種は「ひとめぼれ(早生品種)」。栽培方法はハウス育苗などを行わない昔ながらの方法で、農薬・肥料・除草剤なども使わない自然栽培となります。

なお、地域や品種や種まきの時期が変われば、その分スケジュールも変動します。

収穫:9月下旬

まずは収穫時期から。

昨年は、早生の「ひとめぼれ」中生の「コシヒカリ」の二品種を主に栽培し、9月20日~9月25日にかけて刈り取りを行いました。

このうち、自分で種まきしたのは「ひとめぼれ」。「コシヒカリ」は苗作りに失敗したため、ハウス育苗されて余ったものを分けていただき植えたものになります。

たまたま『早生と中生の栽培期間のズレ』と『種まき時期のズレ』が一致し、収穫時期が重なりましたが、種まき時期が同じであれば「コシヒカリ」は10日~14日ほど遅くの収穫になっていたはずです。

収穫時期は台風や秋雨前線の時期とも被るため、晴れが数日続くタイミングを見計らって稲刈りすることになります。(春と秋は、気圧配置的に晴れと雨が交互に入れ替わりやすい季節です)

追記:2024年は0.7反(約7畝)の広さを手刈り→はざかけ干ししましたが、家族4人で丸4日かかりました。広く栽培する場合は時間に余裕を持った方が良いです。

出穂~開花~登熟の期間:8月10日頃~収穫時期まで(おおよそ45日)

収穫に至る前には、穂が出る「出穂」と、「開花」、実が稔る「登熟」の期間があります。

穂が出てしまえば花が咲き、株間が適当であれば自然と受粉が行われ、実が稔り始めます。

この期間、特に出穂~30日ほどは水が多く必要になりますので、田んぼ内の水の管理が重要になってきます。水の管理については『稲作における水管理』のページがとても参考になりました。米を作る際はぜひ目を通してみて下さい。

溝切り・中干し期間(1週間~10日ほど)

出穂前には、田んぼの水を抜いて乾かす「中干し(なかぼし)」という工程を1週間~10日ほど設けます。3株~5株ほどの間隔に1本溝を掘って水を抜き、地面がひび割れる程度まで乾かします。

これには
「1)根を太くして台風に負けないようにする」
「2)土中に酸素を供給して株を元気にする」
「3)水生の害虫やザリガニなどを駆除する」
「4)乾燥によって病気を防ぐ」
「5)株分かれ(分げつ:後述します)を止めて米の品質低下を防ぐ」
などのメリットがあるそうで、いずれも良い米を収穫するためには大切なことだと教わりました。

とはいえ、昨年は完全にカラカラにすることが出来ず、田んぼの中央は若干ぬかるんだ状態でした。それでも結果的に問題ありませんでしたので、小規模の栽培であれば、あまり気にしなくても良いのかも知れません。

苗が根付く活着~分げつ期「1株当たりの穂数が決まる」

田植えが終わり、植えた苗の根が地面に活着すると、苗はどんどん育ち、1本の茎から複数の新しい茎が出てきます。これを「分げつ(ぶんげつ)」と言います。

師曰く、1回の分げつで1本の茎が3本になるそうで、1か所に1本の苗を植えた場合、3回の分げつで27本(1本→3本→9本→27本)の茎に育ち、1本の茎から1つの穂が出てくるため、これでおおよそ「玄米1/4~1/2合」ほどになるとのこと。

なお、田植えの密植の程度にもよりますが、茎の数は「24~35本」の間で自然と分げつが止まるそうです。

田植えを「いつ」するか?1ヵ所に「何株」植えるか?

しかし、田んぼの水を抜く「中干し」をしてしまうと「分げつ」は止まってしまいます。

田植え~根付くまでの「活着期間」は約7日「分げつ」も約7日に1回発生するため、分げつ回数が3回必要なら「中干し」の最低4週間前には田植えを行う必要があります。

ここで『分げつ期間』『1ヵ所に植える株数』『田植え時期』の、いずれを優先するのか?を決めることになります。

例えば、

【1】種まき時期が遅くなってしまい、田植えも遅くなってしまった場合。

日照時間や気温の変化の関係で出穂予定時期が決まっており、「中干し」までに取れる「活着期間+分げつ期間」が3週間しかない。

その場合は「分げつ回数が2回」となってしまうが、1株あたり27本の茎(穂)が欲しいため、1ヵ所あたり3本の苗を植えてあげれば良い、という計算になります。

「苗3本」×「分げつ2回(×3、×3)」=「茎27本」

また例えば、

【2】種が少ないため1ヵ所1本で植えたい場合。

1本×分げつ3回で27本になるため、「出穂予定時期」の5週間前、「中干し」の1ヵ月前には田植えが終えられるよう、田んぼと苗の準備、田植えの手配を行う必要がある、ということになります。

代掻き「田んぼ表面を均し、雑草を除去する」

田植えの7日~5日ほど前には、田んぼの表面を平らに均し、田んぼ内にポツポツ生えている雑草を無くすために「代掻き(しろかき)」を行います。

一般的にはトラクターを使いますが、耕運機や、狭い範囲なら鍬(くわ)とトンボ(『米作りに最低限必須の道具』を参照)でも十分行えます。(昨年は上記の範囲を鍬だけで行いました。10kgの米が穫れましたが、30kg程度までなら十分です)

ただ、広い範囲(0.3反以上)を人力でやる場合は1日では終わりませんので、田んぼの広さと持っている道具によっては余裕を持った計画が必要となります。

種まき~育苗(約35日)

田植えの前には当然「苗」を育てる必要があります。(苗をJAなどから購入する場合は不要)

苗の育て方は「苗箱での栽培」「苗ポットでの栽培」「苗代へ直播して栽培」など、色々な方法があるため別記事にて紹介しますが、いずれの方法でも露天状態で『種まき〜植えられる状態になるまで35日ほど』の育苗期間が必要になります。

もちろん、「ハウスの利用」や「肥料の使用」により期間を短縮することは可能ですが、最低限の環境で米作りをする場合は、上記日数が目安となります。

逆に、水の冷たい山間部の苗代や、寒い地域であれば40日~45日ほど必要になることもあるようです。

35日を基準とすると7日間以上差があるため、上記の「分けつ期間」に影響が出る可能性があります。東北や北海道などで栽培を検討される方は、地域の農家さんに聞いてみることを強く勧めます。(もしかするとハウス必須かも知れません)

塩水処理~浸水~芽出し(約7日)

種まきをする前には、「塩水処理」による種の選別と、選別した種籾を水に浸けて芽を出す「芽出し」工程が必要となります。

「芽出し」の期間は浸ける水の温度で決まり、一日あたりの水温を積み重ねた「積算温度(せきさんおんど)」が100℃で芽が出るとされます。

水温15℃の水を使うなら、100℃÷15℃=6.67日、約7日で発芽となる計算ですね。私が子供の頃は風呂の残り湯に沈めてましたが、その場合は100℃÷約20℃=約5日で発芽してたようです。

浸水する水にシャンプーなどが混ざると発芽しない・発芽率が低下することがあるため、残り湯を使う場合はご注意を。私は山で汲んだ水を使って浸水しています。

ちなみに、一度芽の出た種籾は、天日で乾かして7日〜10日ほど保管できます。

荒起こし&畦塗り

「代掻き」を行う前に、田んぼの藁や草を土に鋤き込む「荒起こし」と、その後に少量の水を流し入れて、水が漏れないようにする「畦塗り」が必要になります。荒起こしは「春起こし」と言われることもあり、通常は3月の中旬~下旬頃に行われます。

トラクターや耕運機が無ければ“人力”で行うことになりますが、とてつもない日数がかかります。広い田んぼの「荒起こし」を鍬で行ってる方は『雪が積もる前(晩秋~初冬)』『積雪の無い冬期』に行っていますね。

春になってからでは間に合いませんので、機械が無ければ冬前に終わらせたいですし、冬になってから米作りを検討された場合は、初年度のみ地域の方に耕耘をお願いした方が良いです。

冬期潅水&不耕起栽培をされる場合は「荒起こし」は不要ですが、しばらく工作放棄されていた田んぼでの一年目は「荒起こし」「畦塗り」どちらも必須と考えておいた方が良いです。特に、中山間地の棚田は美味しいお米が穫れる一方で、水漏れも多くありますので、ご注意ください。

まとめ

以上、米作り素人2年目が『これから米作りを始めてみようかな』という方に向けて、おおよその米作りのスケジュールをお伝えしました。

意外と、素人目線の米作りの情報が少なく、私も試行錯誤して進めております。少しでも参考になりましたら幸いです。

なお、上記のスケジュールを一覧でまとめると、以下のようになります。

これは4月下旬に「種まき」し、順調に育苗が進み、6月上旬に「田植え」した場合のスケジュールとなります。

中干し~出穂の間に10日ほどの空白の期間がありますが、ここは通常「間断灌水」として、水を入れたり&干したりを繰り返して管理します(出穂以降は大量の水が必要になるのですが、中干し直後に一気に水を与えると良くないそうです)。一方で『田植えが遅れた場合の余裕』としても使えるそうですので、最悪、育苗に失敗した場合でも、ここの期間分はリカバリーが出来るということになりますね。

※10日以上遅れると、さすがに難しいかもしれません‥

とはいえ、昨年作ってみて思いましたが『米は強い』です。

ある程度大きくなれば、周りの草にも負けません。バッタの子供に齧られても大丈夫。

ですので、田んぼに植えられさえすれば、何とか育ちます。

育てる中で感覚的に分かることが沢山ありますので、まずは思い立って作ってみるのが一番でしょう。

興味のある方は、ぜひ挑戦してみて下さい!

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