第三セクターで生産効率・業務効率が上がらない要因と対応について

人事組織

こんにちは。となりのコンサルティングの中村です。

私は弊所を開く前、4年ほど地域の観光拠点を運営する企業に所属していました。

いわゆる『第三セクター』と呼ばれる組織です。

その中で、私は4つの部署を担当しており、内1つの部署が『自社製造品の加工場』でした。

そこは、地元のパートの方々のみで構成される部署で、製造計画なども含めて基本は「全て現場に丸投げ」。当然、モチベーションも生産性も低い状況でした。

そこで、中小企業診断士の勉強を活かして改善を図ったところ、従業員のモチベーションを高め、(投資などを行わずに)生産量を180%まで高めることが出来ました。

以降、同様の組織から声がかかり助言などをしておりますが、今回は、地方の中小事業者や第三セクターにありがちな、生産効率が下がる要因と、その対応策について書いてみます。

生産効率が上がらない最大の理由「製造に集中できていない」

製造部門の生産効率が上がらない理由は事業者様によって様々です。

しかし、特に地方の中小事業者様や第三セクターなどの組織を見てきて感じる最大の原因は、

『製造業務以外にやることが多い』

という点です。

生産効率・業務効率の向上に悩んでいる事業者様では、この点が驚くほど共通しており、具体的には「トイレ掃除・館内掃除」だったり、「ゴミ集め」だったり、「書類作成」だったり、「荷物の梱包」や「配達」「郵便物の持ち込み」だったりと、製造に関係ないことをやっている時間が多いのです。

さらに、これも重要なのですが、上記のような”雑用”を担当する方は、意外にも製造部門内において重要な立場・役回りの方、具体的には現場を指示する側の「リーダー」のような方が担当になっていることが多いのです。いずれも単純な業務ばかりですが、完全に指示待ちの方に任せると上手く行かないからなのでしょう。

製造現場を指示する方が本来の業務以外に時間を取られてしまい、製造に集中できず、現場の指示も不足する。それでは、生産効率が上がらなくて当然です。

生産効率を高めるために、製造に集中できる体制作りが必要だが‥

私が今まで見てきた地方の中小企業や、第三セクター組織での話になりますが、いずれの組織においても『製造に集中できる環境と体制を整える』ことで、生産効率を高めることが出来ると感じました。

しかし問題なのは、いずれの組織においても

『業務を増やす決断』は、あっさり下されますが、
『業務を減らす・業務を止める決断』には時間がかかる

ということ。そして、そのシワ寄せは、また別の現場の方が被ることになります。

こうして、組織間の人間関係も悪くなり、離職率も上がり、現場が回らなくなり品質が落ち、顧客も減り、赤字になるor赤字が続く…、という負のスパイラルに陥っている例をいくつも見てきました。

地方の第三セクターでは、よくある話ではないでしょうか。

現場レベルの改善では、根本的な改善には至らない

製造を担当する現場の方にも、意地や誇りがあります。

現場に入って聞いてみれば『より良いものを作り、地域の発展に貢献したい』という声も聞こえてきます。それは自然なことですし、そのために少なからず改善要望の声を上げてきたはずです。

しかし、今まで変わることが出来なかった。この記事に至っているのはそういうことでしょう。

その場凌ぎの現場レベルでの対処療法では、根本的な解決には繋がりません。違う部門で再び同じことが起こります。

なぜなら、

製造現場の非効率さ(業務外の作業)は、製造現場だけの話ではなく、地域や企業に根付いた「地方ならでは」の価値観が大元にあり、その価値観によって作られた文化だからです。

この改善には、経営層からの「有期雇用従業員に対する」意識改革が必要になってきます。

未だに残る「パートを雑に扱っても良い」という古い価値観

パートタイム・有期雇用労働法の改正などもあったように、昔に比べて労働者の保護は進んでいるものの、地方ではまだまだ「グレー」や「黒」な部分も残っています。

特に第三セクター組織ではそれが顕著で、例を挙げると、労働基準法では労働時間は1分単位での計算が必要にもかかわらず、自治体職員の慣習による「日々15分単位での労働時間計算(始業前と終業後のそれぞれ15分未満は切り捨て)」が適用されている事業所をよく見ます。

創業時に就業規則などを作りますが、自治体の例を参考にするからでしょう。

※残業代ではなく、毎日の労働時間の計上の話です。

違法なのですが、生産効率・業務効率に悩む組織ほど、このような雑な労働管理をしています。

また同時に、経営陣やマネージャー陣が「製造業務=単純な作業」という認識でおり、「単純作業→パートなどの有期雇用者向けの作業で、簡単で誰でも出来る→誰でも出来る仕事だから雑用も任せる」という意識が強く、転じて

『面倒くさいことは全部パートと現場に任せてしまおう』という空気が強く感じられます

地方の第三セクターにてパートで働く方々は、子育てが終わった50~60代の女性が中心となることも多く、どうしても協調性を優先し、集団の輪を乱すことを嫌います。そのため『仕方ないね』と諦め、表立って声を上げることも、ほとんどありません。

こうして、どんどん新しい仕事が増えていくのですが、人手は増えないため生産効率は落ちる一方。それでも、現場の方々の努力によって、とりあえず業務は回りますので『まだ行けるだろう』と仕事は増える。

そんな環境ではモチベーションも上がりませんし、後任も育ちません。いつかパートの方々が退職する時が来ますが、そうなると事業の維持継続すら難しくなってしまいます。

そうして赤字になっても「長や自治体の沽券にかかわる」や「自治体のイメージが」という理由で畳むことも出来ず、税金で補填している組織がどれだけ多いことか。

面倒なことこそ、上が引き受ける「文化」を作る

上でも書きましたが、このような問題を解決するには経営層からの意識改革が必要となります。

とはいえ、当事者の方々はなかなか聞く耳を持ちません。

では、どうするか。

まずは自分が出来ることから始めることになりますが、

面倒なことは現場ではなく上が引き取る”という「文化を作る」ことを勧めます。

責任を負える者が決めると早い。

本来、意思決定は組織の上位に行けば行くほど、速くなります。

それは、上に行くほど「権限」「負える責任」が増えるためです。逆に、組織の下位では責任が取れないため、権限がほぼありません。

しかし、生産効率や業務効率の悪い組織では、本来は上位にて決定すべきことを、下位の現場に”丸投げ”する文化があり、それゆえに責任の取れない現場での優先順位の判断に遅れが発生、効率の低下に繋がっています。

上が決めるべきことは、上に決めてもらった方が良いのです。

経営者や管理職は、決定することと、決定したことを実現すること、決定したことに責任を負うのが仕事なのですから。

そして、本来の業務に関係ないことは、論理的に改善を要望したら良いのです。

一人でダメなら、集団で訴える。一人では伝わらないことも、筋が通っており、複数人いれば話も通ります。

各組織の各々が本来の機能を発揮すれば、業務の効率は改善していきます。

それらは「新しい文化」という形で広めましょう。

文化はどのように作るのか。

地方の中小企業や第三セクターの組織が抱えている問題の多くは、上記のような『古い価値観の押し付け』と、『”面倒”という気持ちからくる決断の先送り』により作られています。

それらは一個人が現場で努力したとしても解消するものではなく、周りを巻き込み、新たな文化を作って対抗することでしか変えられません。

文化を作るには順番があり、『組織学習』の4段階に沿って作っていきましょう。

始めに、まずは自身の学習により、理念や信念などの意識を変える段階。まさに今ですね。

2段階目として、1段階目で学び変わった信念を元に、自身の行動を変えてみます。具体的には上で挙げた『面倒なことは現場ではなく上が引き取る』を自身でやるのです。

この段階で、「判断と行動のルール」や「各々の役割」を明確にしておくことになります。

例えば

・現場が責任を取れないことは上が決める。
・早く決断する。すぐに決断できないなら、いつなら回答できるかを回答する。
・引き取れない業務は、本当に必要な部分だけ残し、いっそのこと止める。

などですね。

3段階目は、それらを自身が直接関係する人に浸透させていきます。

上記のルールを以て自身の行動を変える際、関わる人にも上記のルールを教えてあげてください。それで良い結果に繋がれば、自然とルールが広がり始め、ルールに基づいたコミュニケーションとチームが出来ます。

4段階目は、3段階目で作ったチームが力を合わせ、より上位の者にルールの導入を要請していきます。

良い実績と、導入によるメリットが明確であれば、少しずつ新しい文化として広がり始めます。

すると、その文化からさらに学ぶ人が現れ、彼らは1段階目として再び学び始めることになり、時間はかかりますが、全社に文化を広めていくことが出来るのです。

最初に動くリーダーが求められている

私の場合は3ヵ月ほどで製造部門内に浸透させ、半年ほどをかけて生産効率を高めることが出来ました。結局、合計1年で自身のいた事業部内に浸透させるところまで行き、組織を抜けております。

読んで分かるように、大したことはしていません。組織のあるべき姿をイメージし、その通りに動いただけ。

つまり、誰でも出来るのです。

しかし、現実は悩みを抱える組織が沢山あります。それは、最初に動き出す『リーダー』がいないからです。

これを読んでいる「あなた」の立場が経営者なのか、マネージャーなのか、パート従業員なのかは分かりませんが、組織の事を考えられているということは『リーダー』としての素質があります。

そうでなければ、こんな記事に至りませんからね。

中の人であれば、不満も多いことでしょう。

しかし、不満を口にしていても人は変わりません。変えられるのは「自身」だけ。

今日をきっかけに、一つ動き出してみませんか?

一人で動けなければ、我々『中小企業診断士』がお力になりますので、ご相談下さい。

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