【無農薬】稲作素人2年生が教える、米作りに最低限必須の道具

農業・自然栽培

こんにちは。となりのコンサルティングの中村です。

じつは私、仕事の傍ら、実家の放置された畑の維持管理で農業を始めて10年目となります。

そして昨年より、山間部の休耕田をお借りして、米作りも始めました。(今年は2年目)

米作りは子供のころに手伝った程度の完全素人で、育て方や注意点など、全く知らない中での挑戦でしたが、何とか収穫・実食まで至ることが出来ました。

今回は、「これから米作りをしてみたい」「できるだけローコスト&ミニマムで始めてみたい」という方に向けて、『最低限これだけあれば米が作れて食える!』という、米作りに必須となる道具を紹介します。

※肥料も農薬も除草剤も使用しない、自然農法による栽培を基本としています。

【最初に】1年目に収穫できたお米の量は?

最初に、稲作1年目の素人がどの程度の収量を確保できたのか、紹介します。

『初めてでも上手く出来ました!』と紹介できたら良かったのですが、正直にお伝えします。

1年目の去年は「田んぼ作り」も「苗作り」も失敗しまして、下写真の広さの田んぼにて、農家の方々の余っている苗(コシヒカリ)を植え、合計10kg弱ほどの玄米を収穫&食することが出来ました。

田んぼの様子

初年度である去年は、以下の広さ(0.3~0.5反/アール、三角形です)の田んぼに対して、

この程度(2.5m×5m)の小さい範囲で米作りをすることになってしまいました。

田植えが終わった後でも、こんな感じです。悲しい。

そして、収穫できた量は、以下の約4倍ほどです。(収穫し、自宅にて「はざかけ」するため持って帰ってきたところ)

藁はかなりの量ができましたし、今年に向けての種籾(たねもみ)も大量に確保できました。

しかし、家族4人(夫婦2人+育ち盛りの10代2人)では全然足りません。我が家では1ヵ月20kgほど消費するため、年間12カ月で計240kg。

1反あたりの収穫量(反収)を3俵(1俵60kg×3俵=180kg)で見積もって、1.5反あれば270kgになりますので、最低1.0反、可能なら1.5反ほど欲しいところですね。

反収は土地によって変わりますが、羽咋市の自然栽培による反収の平均値はおおよそ3俵(2.5俵~5.5俵と田んぼで差があります)のため、2年目の今年は2枚の計1.3反で作ります。

「田んぼ作り」に失敗した理由

正直、勉強不足でした。

『水を入れれば、水が張れて田んぼになる』と甘く見ていたのが原因です。

じつは、長年放置されていた田んぼは、土の下に草の根がはびこり、田んぼの底から水が漏れてしまうのです。それに気付かず水を入れ続け『いつまで入れても貯まらないなぁ‥乾燥してるのかな?』なんて不思議に思っていたところ、田植え時期近くになって隣人に怒られ、初めて気付いたのでした。

(隣人はとても怖いおじいちゃんでしたが、怒った後は丁寧に教えてくれました)

対策としては「畔作り」「畔塗り」だけでなく、「事前の荒起こし」「代掻き」も必要です。

特に「代掻き」が重要で、代掻きをすることで《泥のトロトロ層》ができ、このトロトロ層が水底となって水を保ってくれる、とのことです。

確かに、狭い範囲でしたが昨年作った田んぼは代掻きしたことで水漏れが無くなりました。

「苗作り」について

子供の頃、祖父母が「種まき」と「ハウスでの育苗」をしていたため、それを思い出しながら真似してみました。しかし、自宅裏の砂地で簡易ハウスを作ってやってみたところ、乾燥しすぎてダメ。

むしろ、田んぼ内に「苗代(なわしろ)」を作って直播(ちょくはん、じかまき)する方が上手くいくようです。

下の写真は、実際に苗代で育苗を始めた時の様子。左手の縦2つは苗箱とポットを使用し、右の1つは上のイメージ図のようにしています。

そして、育苗に興味が無い方は、「JAから苗を買う」方が手軽。ただし、固定品種や無農薬育苗された苗、人工的な遺伝子組み換えされてない種などを求めるなら、自分で作るしかありません。

(育苗についても別記事にします)

休耕田の棚田では水漏れに注意

「田んぼ作り」については、長年放置されてきた山間部の「棚田」だと、同様のことが起こる可能性が高いです。借りる前に、水の保ちが良いか悪いか?(水保ちが悪い田んぼは、元々水漏れしやすい)、機械が入れられるか?初年度だけ誰かに荒起こし・代掻きをお願いできるか?を確認してみて下さい。

「苗作り」は、よく分からない方・こだわりのない方は買うことを強く勧めます。

失敗すると田んぼ内が草だらけになってしまい、来年また「田んぼ作り」から始めることになりますので‥。

最低限これだけあればOK!米作りに必要な道具

さて、ここから米作り(植えて、収穫して、食べるまで)に必須となる道具を紹介します。

最低限これだけあれば、あとは人力でもなんとかなります。

平鍬(ひらぐわ)と股鍬(またぐわ)

写真上の平鍬は、田んぼの畔を作ったり、畔に泥を塗って整えたり、溝を掘ったり、育苗する場合は苗代を作ったりするために使います。

田んぼの土質にもよりますが、出来るだけ先端が重い鍬の方が、地面に食い込み易く耕すのに力を使わないためお勧めです。

写真下の股鍬(「備中ぐわ」とも言います)は、田んぼに水を張ったのち、畔から中心にかけて1mほどの幅を代掻きする(水を張って耕しトロトロ層を作る)のに使います。平鍬では泥が付いて効率よく耕せないため、股鍬も用意した方が良いです。

逆に、股鍬だけでは軽すぎて、水を入れる前の田んぼ全体の耕耘には向きませんので、平鍬と股鍬の両方が必要となります。

とんぼ(レーキ)

田植えの直前に、田んぼ底面を均し、細かい草の芽を除去(または泥に埋め込む)のに使用します。

稲は他の野菜に比べて強靭な植物ではあるのですが、日当たりが悪いと途端に成長・実りが悪くなるため、田植え直後の最初期は特に除草に気を遣う必要があります。

出来るだけ田植え直前に代掻きし、雑草の芽を除去してしまいましょう。

長い紐と棒

田植えにあたって、苗を等間隔に条間植え(じょうかんうえ)するための目印をつけるのに使用します。昔ながらの「ころがし」や、「田植え機」を使用するなら不要です。

なお、目印など無しで植える場合も不要ではありますが、稲作の歴史をみると条間植えが広がってから日当たりの安定化・病気発生率の低下が進み、米の収量が安定・増加したという記録が残っています。作物にとって日当たりや風通しというのはとても重要だということです。

草刈り機

除草剤を使用しない前提のため、田植え前に1回、田植え直後に1回、夏場に1,2回と計3,4回ほど、田んぼ周辺の草刈りが必要です。田んぼの広さにもよりますが、とても手作業ではやってられませんので、草刈り機の使用を推奨します。(草刈り機は「混合油を使う2サイクルのエンジン式」「排気量26cc以上」「刃のサイズ255mm」がパワフルでお勧めです)

なお、草を放置しても良いのですが、実りが悪くなったり、風通しの悪さから病気が広がったりします。また、中山間地域等直接支払制度の対象地域に該当する場合、お金が絡むため、無料で借りる条件として頻繁な草刈りなどの管理が必須になる場合がありますので、やはり草刈り機は必須かなと思います。

また、除草剤を使う場合は不要になりそうですが、代わりに噴霧器などが必要で同じくらいの手間がかかります。しかも草丈が長いと利きが悪いですし、年間を通して2,3回は噴霧する必要があるため、草刈りの方が手軽です。

鎌(ステンレス)/軍手

除草や稲刈りに使用します。錆びにくく、長めのステンレス製の鎌がお勧めですが、ちょうど自前の鎌はタケノコ狩りで折れてしまって手元にありませんでした。

はざかけ用の竹(または単管パイプ)と、組むためのロープ(またはクランプ)

刈り取った後の稲穂は乾燥が必要なのですが、乾燥させる手段としては「乾燥機の使用」「天日でのはざかけ」の2つがあります。

「乾燥機」を使用できる伝手があるならこちらは不要ですが、伝手が無い場合は「はざかけ」が必須となりますので、はざかけ用の竹(直径6-8cmほど)か、単管パイプ、それらを組むためのロープ(単管を使うならクランプ)を用意しましょう。山間部なら竹は現地調達できるかと思います。

(多くの地域ではJAが運営するライスセンターにて「乾燥機」を所有しており、その地域分をまとめて受け入れていますが、事前予約が必要で、かつ「特定の米種のみ」「個人の自家消費分の受け入れは不可」などの制約があります。乾燥機の利用を考えるのであれば、個人で乾燥機を持っている方を探すか、事前に地域のライスセンターに相談してみて下さい)

必須だけど基本はレンタルや外部委託、複数人での共有を推奨するもの

次に、米を育てて食べるためには必須なのですが、自己での調達が困難な(orコストがかかる)ため貸してくれる施設か農家を探した方が良い道具達を紹介します。

脱穀機

刈り取り、乾燥が終わった稲から、稲穂を取り外して「籾(もみ)」と「稲藁(いなわら)」の状態にするために必要です。

現代はコンバインにて”刈り取り”と”脱穀”を同時に行ってしまうのが主流のため、あまり見かけませんが、エンジン駆動の「ハーベスター」「足ふみ脱穀機」などが新品・中古で販売されています。

コンバインを貸してもらえる伝手があるなら、不要となります。

私は、1年目は友人農家のハーベスターを借り、2年目の今年は足ふみ脱穀機にて脱穀を予定しています。

籾摺り機

脱穀し「籾」となったお米から、籾殻(もみがら)を除去して「玄米」にするために必要です。

籾ごと精米できる精米機があり、精米で食べるなら不要ですが、玄米で食べたり保管する場合は必須となります。

一応、中古の籾摺り機も販売されておりますが、一般家庭の100Vで使用できる籾摺り機は少なく、また、通常の農家はコンバインで刈り取り後、ライスセンターにて乾燥・籾摺り・選別を行ってしまいますので、籾摺り機を持っていない方も多いです。

コンバインを貸していただける農家さん(またはJA)を探すのが一番早いですが、有機農法や自然栽培をされている農家さんであれば、持っている可能性もあります。一度、お近くのJAに相談してみて下さい。

選別機(グレーダーや調整機)

収穫したお米は、そのすべてが食用に適するわけではありません。

天然の作物ですので、カメムシなどの虫食いにあっているお米や、収穫遅れ・高温などによる茶米、未成熟米、割れ米など、食用に適さないお米も多少含まれてしまいます。(土や砂利なども)

そのため籾摺り後(または籾摺り前)に、グレーダーや調整機を通して、食べられるお米のみ選別を行います。

食べる都度、手選別するということも出来なくは無いのですが、手間がかかりすぎるためグレーダーの使用を勧めます。グレーダーは昔からお米を作っている農家の家には残っていることも多いため、近場の米農家の方を訪ねてみれば見つかる可能性が高いです。

まとめ:「米」は最も効率の良い作物の一つ

以上、米作りを始めるにあたって最低限必要となる道具の紹介でした。

こうして見ると、本当に手間のかかる農作物ですね。

しかし一方で、『長期保存が可能』『収穫倍率(1粒の種から何粒の実が取れるか)が140~400倍』『食するまでの加工手間が少ない』という特徴もあります。

(例えば小麦の収穫倍率は数倍~20倍程度、米と違って粒のまま調理しても美味しくない)

また主食であるだけでなく、醤油や味噌や酢などの調味料、かぶら寿司やたくあんなどの漬物、日本酒や焼酎などなど、日本には米が無いと成り立たない製品が多数あります。

日本の文化に根付いた重要な作物であり、まさに命をつなぐものだったからこそ、大変であっても、2,000年以上わたって栽培されてきたのでしょうね。

高齢化により米農家は減る一方ですが、その代替として近年IotやAIを活用した農法(アイガモロボットによる雑草の防除、水位・水温センサーを用いた水の自動管理など)が発展し、特にここ5年ほどで大幅に効率化が進んでいるように感じます。(あくまで石川・富山においてですが)

また、自家消費用の稲作に興味をもつ方も増えつつあり、「ササシグレ」や「旭1号」「農林1号」「愛国」など、戦前に作られていた古い品種を見かける機会も増えてきました。

(私も2年目は「愛国」を育てます)

今後は「生産効率を高めた大きな生産者組織」と「ローコスト栽培にこだわる個人単位での農家」という真逆の2者が増えるのではないかと思っておりますが、個人的には、未来に残していけるように消費者の関心を高めることが重要ではないかと思っています。

両者にかかわりが有る者の一人として、興味を持つ方に向けて、今後も情報をお届けしていきますね。

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