自社サイトの記事作成に慣れ、作成記事数とPV数もそこそこ増え、問い合わせ数も増加してきた。
でも、もう少し多くの読者に届けたいし、もっと多くの結果に繋げたい。
今回は、そんな事業者様・企業担当者様に向けて、記事作成の前段階の重要な作業『ペルソナ(読者)設定』の方法と、その効果について書いてみます。
そもそも「ペルソナ」とは?
本来はラテン語で”仮面”という意味で、元は心理学において「周囲に適応する自分の外的側面」として使用される言葉だったようです。人は様々な自分を持っており、”状況に応じた自分”を使い分ける(=仮面をかぶる)とされます。(株式会社アトラス様のソフトでも、そのような使われ方をしてますね)
この「状況に応じて」という部分から転じて、SEOや商品開発、R&Dなどのビジネス分野においては『自社の商品やサービス、コンテンツを求め・消費すると想定される理想の人物』というような意味で使います。SEO的に分かりやすく表現すると「記事の情報を求める読者像」ですね。
例えば、ある商品【A】を最も多く購入する層を分析したところ「年齢層が40~50代の男性で、地方在住者、夜勤の方」という結果が出たとしましょう。
(※分かりやすくするために単純化しています。実際はもっと細分化します。)
正直、この条件に当てはまる方は全国に大勢おり、彼らの生活スタイルも、消費に至る背景も様々。各々がどのような理由で消費に至ったのかも、分かりません。
ですが、彼ら消費者の “外的側面” の一つとして浮かび上がった「年齢層が40~50代の男性で、地方在住者、夜勤の方」という一つの “共通点”。
これが商品【A】にて注力すべきペルソナにあたります。
ペルソナ設定を意識した場合の記事作成の流れ
上記の場合、①商品【A】の発売→②調査、の順により「年齢層が40~50代の男性・地方在住者・夜勤の方」というペルソナ像が取得できました。しかし、実際の新商品開発や新規市場開拓においては、①事前の調査でペルソナ像を設定→②商品開発や市場開拓に活かす、という流れになります。
これは、SEO対策における記事作成も同様で、『多くの人に読まれる記事』や『反応率の高い記事』を作成するには、①先にペルソナ像を設定→②その上で記事作成という手順を取ります。
ペルソナを設定する効果、設定で何が変わるのか?
記事作成の前段階においてペルソナを設定することで、何が変わるのでしょうか?
設定しない記事と比べて何が違うのでしょう?
一言で表すならば、
ペルソナ(=読者)の共感と信頼を得やすい文章・記事になります。
具体的な設定方法は後述しますが、記事の作成前にペルソナとなる人物像を設定・イメージした上で記事の作成に取り掛かると、
・ペルソナの人物像が「興味を持つキーワード」の選定が可能になり
・その人物が「共感するような表現・言いまわし」や「理解しやすい記事の構成・順番」「納得しやすい説明背景」等を活かした記事作成が可能になります。
その結果、砕けた言い方をすれば
『わかるわかるー!』
『そうだよね!』
『なるほどねー!』
という同意が沢山得られ、読者の理解が進むということです。
そして、多くの共感と信頼を得られた情報は拡散されやすくなり、より多くの読者に情報が届き、より多くの行動(問い合わせ・購入)に繋げることが出来ます。
分かりやすく例を挙げると
“濃厚で甘さを控えたチーズケーキ”を「40-50代男性の特別な日の贈り物」として売りたいとして、「10-20代女性」に響くようなキーワードと表現で紹介しても、売上は伸びません。
なぜなら、40-50代男性と10-20代女性では、その価値観や、それぞれ消費する目的と状況、興味を持つポイントが違うからです。
40-50代男性に向けて売りたければ、「40-50歳男性が買いたくなる」ような(記事なら「読みたくなる」ような)売り方・伝え方が必要です。
そのために、ペルソナ(=読者)を設定しましょう、という話ですね。
ペルソナ設定のやり方
といっても、そんなに難しい話ではありません。
大まかに3つの作業を通して設定すれば十分です。各作業はPCのメモ帳やホワイトボード、ノートなどに書き出す形でやってみましょう。(ブレインダンプの手法がお勧めです)
《作業1》作成する記事の目的に合わせて「誰」を設定
作成する記事は、その目的に合わせて大きく以下の2つに分かれます。
【1】特定の事業における「問い合わせ」や「売上」の増加を目的としたもの
【2】記事による集客(PV)増加を目的としたもの
作成する記事が、【1】「問い合わせ」や「売上」の増加を目的としたものであれば、『事業において最も需要がありそうな顧客(見込み客)』を設定し、【2】記事による集客(PV)増加を目的としたものであれば、『その記事の情報を最も知りたい読者』を設定します。
【2】の場合は1記事毎にペルソナを設定することになるため後からの変更も容易ですが、【1】の場合は複数の記事や事業全体に渡って共通のペルソナを設定することになりますので、後からの変更による影響が大きくなります。
そのため、事前の市場調査と分析、事業戦略の明確化が重要となりますので、まず最初に【1】【2】どちらの記事なのか?を把握することから始めます。
《作業2》「どのような」で、具体的な一人の人物をイメージする
作業1で「誰」が決まったら、次はそれを具体化します。「どのような」誰なのでしょうか?
『具体的な一人の人物像』がイメージできるまで、リアルに設定してみましょう。
これを考える際は「ジオグラフィック(地理)」「デモグラフィック(社会経済)」「サイコグラフィック(心理)」の視点から捉えてみると、イメージしやすくなります。
◆ジオグラフィックの視点
どこの国、どこの県、どのような地域に住んでいる人なのか?
人口は多いのか・少ないのか?海や山が近いのか・都市部なのか?車移動が多いのか・公共交通機関が発達しているのか?一年を通しての天気・気温・湿度は?
◆デモグラフィックの視点
年齢・性別は?職業と所得水準、社会的地位はどのくらいか?どのような家族構成か?ライフステージはどの段階か?
◆サイコグラフィックの視点
どのような価値観で、どのようなライフスタイルを求め、毎日を過ごしているのか?趣味や嗜好、好きなもの・嫌いなものは何か?信仰の有無・信念・大切にしているものはどうか?日々何を感じ・意識して生きているのか?
《作業3》「どういう経緯で」記事に至り、「どうなって欲しい」のか?
読者の人物像が大まかに見えてきたら、最後に『どのような経緯で記事に至ったのか?』『記事を読んでどうなって欲しいのか?』を想定します。
「朝の通勤電車で職場に向かう中で読む」のか、それとも「休日の自宅のベッドでゴロゴロしながら読む」のか。「悩みを検索して記事に至った」のか、「SNSで流れてきて、目に留まったから開いた」のか。
同じ情報であっても、記事に至った時点での「心理状態」や「時間的余裕の有無」によって、プラスに伝わることもあれば、マイナスに映ることもあります。いつ・どのようにして記事に至り、読むのか?それでどうなって欲しいのか?を想定しておくことで、読者を慮り、伝わりやすくなる記事の作成が可能となります。
考えすぎて止まるくらいなら、輪郭が曖昧でも書いてみる
上記の3作業を行うことで、リアルな読者=ペルソナの設定が可能となります。
細部まで行うことで、記事を読んだ時の表情や感情までイメージでき、具体的な行動をとってもらうことも可能になりますが、その一方で細部までリアルにイメージするのはなかなか大変。慣れるまで時間もかかります。
そのため、考えて難しそうであれば、
ペルソナのイメージが曖昧でも構わないので、記事作成に取り掛かってしまうことをお勧めします。
私の場合、最低限の設定として「どこに住み、いくつ、性別、嗜好、過去の背景」と、「読む時間帯、どのように記事に至るか(検索・各SNSのシェア・ニュースでのピックアップ・5chまとめ・定期発信による習慣)、その目的(娯楽・悩み解消・暇つぶし等)と、以降の行動」くらいまで想定してから書き始めています。
考えすぎて手が止まると、記事作成計画やプロジェクト全体の遅延に繋がりますし、実際に文章として書く中で「見えてくる人物像」というものもあるからです。
記事はリライト(書き直し)前提で考える
公開した記事はGoogleのサーチコンソールやアナリティクスなどのサービスを利用することで、読者層や使用する端末、滞在時間、記事に至った流入経路や検索キーワードなどの情報を集めて分析することが可能です。
しかし、記事作成前に設定したペルソナが、実際の読者や、彼らの需要と合っているのか?については、それほどまでに詳細な情報を取得することが出来ません。
資金力がありビッグデータとの比較検証が可能ならともかく、多くの個人事業主や中小企業は、あくまでPV数や滞在時間、離脱率、問い合わせや売上のコンバージョン率などから、相対的に判断するしかないのです。
だからこそ、記事公開後のチェックとリライトが重要になります。
記事は作れば作るほど、ペルソナ設定やライティングが上手くなります。
何事も最初から上手くは行きませんし、その時点で「上手く書けた」と思った記事であっても、しばらくしてから読み直すと不満が沢山見つかるもの。そのため、『今はこれで十分』『またどこかでリライトしよう』と割り切って、先に進める方が効率が良いです。
記事は「公開して終わり」ではなく、「公開してから育てるもの」と考え、想定したペルソナと実際の読者との乖離を埋めるよう、各記事と向き合ってみてください。