こんにちは。となりのコンサルティングの中村です。
前回の更新より、1年以上が過ぎてしまいました。
じつは2024年の6月から、令和6年に発生した能登半島地震により被害を受けた能登の事業者の復旧・復興の支援の一環として、奥能登方面(穴水町や志賀町)の商工会への派遣支援を行っておりました。
初回の派遣が始まってから1年半近く経ち、その間に多くの補助金や支援策なども公開されてきました。2025年も終わるということで、一度これまでの支援活動を整理してみたいと思います。
災害時における、中小企業診断士の支援の参考としてご覧ください。
支援の基本は復旧に向けた事業計画の策定と、補助金を含む資金調達支援
令和6年の能登半島地震では、私の住む羽咋市は震度5強に留まりましたが、支援先である志賀町や穴水町では最大震度6強~7を計測。特に穴水町では、見渡す限り全ての構造物が何かしら壊れており、その被害の大きさを実感しました。
そのような環境においては、まず第一に「生活の建て直し」から始まることとなります。日々の生活ができなければ、事業の再開もありません。
そして、日々の生活が何とか再開できたのち、事業の再開に取り掛かることになります。
事業の再開は主に2段階あり、大きなマイナスを最低限許容できるマイナス~ゼロに戻す「復旧」と、復旧から災害前の状況に戻し、さらなる発展を目指す「復興」では、それぞれ求められることが違います。
この1年半の支援では、前者の「復旧」に掛かる支援が9割以上を占め、「復興」に関する支援は1割未満だったように思います。
「復旧」段階の支援は、色々失われてしまったモノの中から、何が使えるか?を洗い出し、どのようにゼロに戻していくか?を考えます。
当然、それらの活動にはお金がかかるため、各事業者の自己資金の確認や金融機関との話し合い、従業員や後継者の確保、補助金の活用可否や申請~実績報告の支援などを日々行います。
今回の支援では、特に「なりわい再建支援補助金」「小規模事業者持続化補助金(災害支援枠)」を始めとして、石川県独自の「営業再開支援補助金」「チャレンジ補助金」「起業促進補助金」の申請~実績報告に掛かる支援の需要が多くなっています。
以下に、支援した例の一部を紹介いたします。
能登半島地震からの復旧支援の例
支援例1.飲食小売業
- 相談内容: 地震により食品製造所と商品倉庫が全壊し、店舗も半壊。店頭販売ができず、顧客(特に高齢者)の避難による売上減少にも直面。再建と販路拡大を模索していた。
- 支援内容:各種補助金の活用による新分野事業への進出
- 被災した店舗内へのキッチン移設と、移動販売車(キッチンカー)の内装整備を支援。
- 全壊した倉庫の再建計画(新分野:軽量鉄骨倉庫への建替え)を支援。
- 富山県など町外新市場への進出(レモネード販売等)を計画。
- 結果:キッチンカーの稼働により、町外のイベント出店が可能となり、キッチンカー協会を通じた新たな販路が開拓された。これにより「震災前に迫る売上回復」を実現。倉庫再建も進行中。
支援例2.繊維製造業
- 相談内容: 5つの工場・倉庫が被災し、特に主力工場が全壊。機械も多数損壊。これを機に工場を集約したい。また、下請け脱却のため自社ブランドでの海外展開やBtoC販売を行いたい。
- 支援内容:
- 「なりわい再建支援補助金」を活用し、分散していた工場を1カ所の新工場へ集約する復旧計画を策定。複雑な按分計算や機械の移設・修理計画を支援。
- 「チャレンジ補助金」を活用し、海外BtoB市場(東南アジア等)および国内BtoC市場(防災・アウトドア用品)向けの多言語Webサイト・ECサイト構築を支援。
- 結果: 効率的な生産体制への移行(工場集約)が進み、新市場開拓に向けたブランド構築とWeb発信の基盤が整った。
支援例3.水産業(牡蠣貝養殖業)
- 相談内容: 牡蠣処理場の全壊、ポンプ・冷蔵庫等の損壊。売上が激減しており、復旧だけでなく、夏場の閑散期対策として「釣り筏(いかだ)」事業を始めたい。
- 支援内容:各種補助金の活用による従前環境への復旧と、新事業への進出。
- 「営業再開支援補助金」でプレハブ処理場を仮設。
- 「小規模事業者持続化補助金」でポンプ・冷蔵庫の修繕と、直販用HPの作成を支援。
- 「チャレンジ補助金」を活用し、新たな収益源となる「釣り筏」の整備と、冬場でも釣れる環境(強み)を活かしたチラシ作成を支援。
- 結果: 仮設施設での営業再開を果たし、HPを通じた直販体制と、新たな釣り事業による通年収益化のモデルを構築中。
支援例4.観光農園
- 相談内容: 地震で電気設備が損壊。復旧に合わせて、単価の安い「卸売り」から、高付加価値な「直販・観光農園」へシフトしたい。
- 支援内容:
- 市場価格と付加価値の高い商品を作るための「設備」導入および補助金申請を支援。
- 単価の低いフロントエンドサービスから、収益性の高いバックエンド商品までの顧客導線の設計。想定される顧客数と購買率から収支計画を作成。
- 「チャレンジ補助金」を活用し、団体客受け入れ強化のためのHP作成と、来園者をECへ誘導するチラシ・ツール作成を支援。
- 結果: 付加価値の高い高単価商品化と、観光農園への集客・EC誘導を組み合わせた高収益モデルへの転換が進んでいる。
支援例5.遊漁船業
- 相談内容: 冬場(閑散期)の釣り客減少と売上低下。
- 支援内容:
- 船の位置を自動保持する「オートパイロット機能付きエレキモーター」の導入および補助金の活用を支援。これにより冬場の釣果アップと集客増を狙う計画を策定。
- 結果: 補助金申請を行い、閑散期の売上底上げに向けた設備投資が実現に向かう。
支援例6.理美容業
- 相談内容: 店舗兼住宅が半壊し、建物ごと公費解体してしまった。一度廃業を決意した上での相談。高齢(70代後半)であり、巨額の借入をしてまで再建すべきか、近場に後継者もおらず悩んでいる。
- 支援内容:
- 「なりわい再建支援補助金」の活用による再建を提案。処分制限期間の縛りに対し、金沢にいる同業親族への将来的な事業承継や第三者承継の可能性も提示し、今後の人口動態を踏まえた事業計画・資金の回収計画を作成した上で再建を判断。
- 建物の所有者(父・母)ごとに申請を分ける複雑な書類作成を支援。
- 結果: 一度は廃業を決意したものの一転、店舗再建に向けて工事が進む。
支援例7.理美容業
相談内容: 震災後、主要顧客である女性客が減少し売上が低迷。単価の高い「脱毛メニュー」を強化して男性客や新規客を取り込みたい。
支援内容:Googleビジネスプロフィールの充実(MEO対策)とWeb広告の出稿と補助金活用を支援。男性客もターゲットにした集客導線を設計。
結果: 新たな顧客層(男性、能登全域)へのアプローチを開始し、売上回復を図る体制が構築できた。
支援例8.建設・解体業
- 相談内容: 元々は大工と住職だが、被災地では「解体・撤去」が進まないため復旧工事に着手できず、仕事が停滞している。解体業に参入し、地域のボトルネックを解消したい。また、解体時の仏具等の扱いに困る被災者に寄り添いたい。
- 支援内容:
- 各種補助金の活用について助言を行い、解体・撤去に必要な重機や工具の購入を支援。
- 住職と連携した「仏具の預かり・供養サービス」という独自の付加価値(心のケア)を事業計画に盛り込み、単なる解体業との差別化を図った。
- 結果: 解体から再建まで一気通貫で請け負える体制を確立。地域ニーズに合致し、自身の事業安定と地域復興の両立を実現。
支援例9.ガソリンスタンド
- 相談内容: 町内2カ所のガソリンスタンドが甚大な被害(地下タンク損壊、建物全壊等)。復旧には数億円規模の費用がかかるが回収計画が未定。また、将来を見据えて新事業への進出可否も検討したい。
- 支援内容:
- 数億円規模の復旧計画の策定を支援。
- 新事業との見積もりの切り分け、金融機関との融資調整など、大規模かつ複雑な案件の調整を伴走支援。
- 結果: 巨額の資金調達と補助金の活用に関する方向性が決まり、地域のインフラ維持と新事業展開の両面でプロジェクトが進行中。
支援例10.廃棄物処理業
- 相談内容: 事務所、車庫、休憩所が被災。単なる原状復旧ではなく、業務効率化のために配置を変えて再建したい。
- 支援内容:
- 「原状回復と異なる復旧」に向けた実現可能性の高い復旧計画を構築、提案。
- 複数の見積もりパターン(修繕vs建替え)を整理し、資金繰りを考慮した最適なプラン決定を支援。
- 結果: 業務実態に即した形での施設再建計画が固まり、現在実現に向けて事業実施中。
支援例11.宿泊業
- 相談内容: 宿泊施設の心臓部である「風呂のボイラー設備」が損壊。地下配管のため修理が困難。
- 支援内容:
- 地下配管の掘り起こしは不可能であるため、露出配管(バイパス工事)による復旧を提案し、実現に向けて調整。
- 結果: 営業継続に必要な入浴設備の復旧を実現。
支援例12.農業/食品小売り・卸売り業
- 相談内容: 納屋が被災。また、近隣の廃業する農家から施設や田畑を引き継ぎ、新たな特産品として「レモン」の生産・販売を行いたい。
- 支援内容:
- レモンの選別・梱包・苗木保管を行うための作業場の建設に向けて、実現可能な事業計画の策定を支援。単なる”作業場”ではなく「付加価値を生む場」として計画案を作成。
- 結果: 新たな特産品(レモン)による事業拡大と、地域の農地保全・新産業の開発に向けたスタートを切った。
支援例13.建設資材卸売り業
- 相談内容: 建設資材の卸売りが本業だが、施工業者が不足しており工事が進まない。自社で「外壁施工」まで請け負えるようにし、新たな市場を開拓したい。
- 支援内容:
- 「チャレンジ補助金」を活用し、外壁施工に必要な資材置き場の整備や、運搬車両の導入を支援。「新たな市場(外壁施工)への挑戦」として事業計画を策定。
- その他、「なりわい再建支援補助金」を活用し、被災した太陽光パネル等の修繕も支援。
- 結果: 卸売りから施工までの一貫体制構築に向け、設備投資の目途が立った。
1年半の支援活動を経て
今回は、この1年半で支援した、能登半島地震からの復旧例を紹介しました。
実際にはこの4倍ほどの事業者の支援や相談対応を行っており、災害により市場や需要が減少する事業者ばかりではなく、特需により売上が急増し、市場も急拡大する業種もありました。(瓦屋や建設業、土木業など)
また、同じ被災事業者でも、従業員(後継者)や設備の有無、資金の有無によっても選択肢が大きく変わってきます。
そのため、活用できる補助金などの支援策は共通しているものの、『同じような支援や助言というのは出来ない』ということを実感しました。(通常の支援でも同様ですが)
2026年は中小企業の復旧、小企業事業者の復興支援
私が支援に伺っている地域に限りますが、2025年までの支援で個人事業主~小規模事業者までは復旧の方向性が定まって来たのではないかと感じます。
一方、規模の大きくなる中小企業はまだまだ復旧の方向性も定まっていないところも多く、市場と雇用維持のため、目の前の売上を確保することが優先されてきたようです。
しかしながら、施設や設備が壊れた状態では生産性の向上にも限界があるでしょうし、今後の円安や物価高騰などに対応していくためには、能登半島地震からの本復旧が必要になるのではないでしょうか。
そのため私の私見としては、2026年は中小企業の復旧と、これから復興段階に入る小規模事業者の支援の需要が高まると予想しています。
改めて、来年も全力で需要に応えていけるよう、改めて心身を引き締めて新年を迎えます。
